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ECサイト運営では組織体制と連携が売上を左右する
ECサイトを運営していると、ある瞬間に気付きます。「このままでは、うちの会社、成長できない」と。
商品ページの更新は誰がやるのか。カートの離脱率が高いときは、どの部門が対応するのか。在庫が切れたのに販売ページが残っている。マーケティング部門が集めたアクセスなのに、運用チームが対応できていない。営業とEC、企画とサイト運用、部門ごとに目標がバラバラで、一体何のために動いているのか分からなくなる。
月次の売上が100万円なら、ひとりで何とか回るかもしれません。でも売上が500万円、1000万円と増えると、その「何とか」は崩壊します。
なぜEC運営の組織化が急務なのか
ECサイトは、従来の店舗運営とは違います。店舗なら、商品を並べる人がいて、接客する人がいて、レジを打つ人がいる。役割は空間で自然と分かれます。
でもECサイトは違います。すべてが「画面」に集約されるから、部門間の境界が曖昧になりやすい。誰が何をするのか、明確に決めなければ、情報は散らばり、判断は遅れ、結果として売上は伸びません。
さらに重要なのは、顧客心理です。ユーザーが購入を躊躇する背景には、「失敗したくない…」という不安が隠れています。写真と実物のギャップ、配送の不確実性、返品対応への疑問。これらの不安を払拭するには、商品企画の段階から、マーケティング、サイト運用、顧客対応まで、すべての部門が同じゴールを共有していなければ成り立ちません。
多くのEC担当者が直面する組織課題の実態

私たちが支援するEC企業の多くは、ある共通の課題を抱えています。
兼任体制による運用の限界
営業が商品ページも更新する。企画担当者がメール配信も担当する。1人が複数の役割を抱え、結果として全てが中途半端になる。
最初はこれで何とか回ります。でも売上が月500万円を超えると、明らかに限界が見えます。データ分析する時間がない、カゴ落ち対策ができていない、新商品の企画と現在の運用で優先順位がつけられない。焦りと疲弊が溜まる一方です。
兼任体制では、緊急対応に追われて、戦略的な改善ができないのです。
部門間のサイロ化と情報分断
組織が成長する過程で、部門ごとに分かれることは避けられません。ただし、分かれ方を間違えると、「サイロ化」が起きます。
商品企画部門は新商品のことだけを考え、マーケティング部門は集客数だけを追う、運用チームは日々の対応に追われている。各部門が独立した目標を持ち、情報が共有されない状態です。
結果、どんなことが起きるか。カートの離脱率が高いことを運用チームが気付いても、それがサイト設計の問題なのか、商品情報の不足なのか、配送費用の表示の問題なのか、判断できません。原因が複数部門にまたがっているからです。
意思決定の遅延が機会損失に
ECサイトの競争環境は非常に速いです。競合が新商品を投入したら、即座に対抗する必要があります。顧客のニーズが変わったら、すぐにサイトに反映させなければなりません。
ところが、部門間連携がなければ、意思決定に時間がかかります。「これ、誰に相談すればいい?」という状態が繰り返され、判断は先延ばしになります。
その間にも、カゴ落ち率は上がり、顧客満足度は下がります。機会損失は、組織の未整備から生まれるのです。
ECサイト運営に必要な部門と役割の分解
では、ECサイト運営に必要な部門は、具体的には何か。そして、それぞれの役割は何か。
企業規模や商品特性によって、詳細は異なります。ただし、基本構造は共通しています。
商品企画・仕入れ部門の役割
この部門の役割は、単なる「商品を決める」ことではありません。顧客が購入を判断するために必要な情報をすべて揃えることです。
具体的には、商品写真の多角的な撮影、サイズ感や質感の詳細説明、利用シーンのイメージ画像、そして納期や返品保証についての明確な情報です。
これらを準備する段階で、「顧客の購入を躊躇させるブレーキは何か」を常に問い続ける必要があります。色味がイメージと違わないか、配送に日数がかかりすぎないか、初期不良時のサポートは十分か。これらの不安を先回りして解消することが、この部門の責務です。
マーケティング・集客部門の役割
この部門は、単に「アクセスを集める」のではなく、「購買可能性の高いユーザーを集める」責務を負います。
広告やSNS、SEO施策を通じて顧客を呼び込むことはもちろん、その過程で「どのような顧客が来ているのか」「どこで離脱しているのか」を把握し、運用チームと共有することが必須です。
たとえば、GA4の分析で直帰率が特に高いページを発見したら、それは単に「改善が必要」という通知ではなく、サイト運用チーム全体への「アラート」として機能すべきです。
サイト運用・UX改善部門の役割
この部門は、ページの更新や在庫管理だけでなく、「顧客体験の最適化」を主責務とします。
カート画面でのボタンのタップ領域、入力フォームのオートコンプリート設定、エラーメッセージのリアルタイム表示など、コーディング段階で離脱率を下げる実装が求められます。
さらに、カゴ落ち分析を継続的に行い、その原因を特定し、次のアクション指示を出すのも、この部門の役割です。
カスタマーサクセス・物流部門の役割
配送の正確性、返品・初期不良への迅速な対応、顧客からの問い合わせへの丁寧な回答。これらが、顧客満足度を左右します。
この部門が集めた顧客の声や不満は、他の部門へのフィードバックとして機能すべきです。「この商品は返品率が高い」という情報は、商品企画部門に届き、次の仕入れ判断に反映されるべき重要な情報です。
ECサイト組織体制の構築を判断する際の3つの基準

では、いつ、どのような組織体制に移行すべきか。「感覚」で判断してはいけません。具体的な基準があります。
月次売上規模による必要な体制
| 売上規模 | 推奨体制 | 優先課題 |
| 月100万円以下 | 兼任体制(1~2名) | 基本フロー構築、部門分け未定 |
| 月300万~500万円 | 専任化開始(3~5名) | 情報共有の仕組み構築 |
| 月1000万円 | 部門分化(5~8名以上) | 部門間連携フローの確立 |
| 月3000万円以上 | 組織体制の最適化(10名以上) | 各部門の目標統一、カゴ落ち対策の一元化 |
月300万円を超えたら、ECチームの兼任体制は限界を迎えます。この時点で、商品企画とサイト運用の分離、マーケティングと運用チームの役割明確化を検討すべきです。
商品数と在庫管理の複雑度
扱う商品が増えると、在庫管理の負担は指数関数的に増えます。商品数が100を超えたら、もう人力では管理できません。
さらに、食品・飲料のように賞味期限を管理する業種、美容のように色展開やサイズ展開が多い業種では、複雑度がさらに高まります。
この段階では、単に「在庫部門を作る」のではなく、商品企画、マーケティング、運用、物流のすべてが在庫情報を共有する仕組みが必須です。
顧客ニーズの多様性と対応頻度
BtoB商社の場合、顧客ニーズは多様化し、カスタマイズ対応が増えます。同じく美容や印刷業も、顧客の個別ニーズに応える組織体制が求められます。
顧客からの問い合わせが月100件を超えるようになったら、カスタマーサクセス部門の独立は避けられません。その時点で、顧客の声を他部門に届ける仕組みも同時に構築することが重要です。
実例に見る業種別のEC運営組織構築パターン
食品・飲料ECの立ち上げ期~成長期の体制変化
食品・飲料ECは、賞味期限管理と在庫の鮮度が極めて重要です。立ち上げ期は、商品企画と運用が兼任で始まるケースがほとんど。しかし月500万円を超えると、瓦解します。
ある食品メーカーの事例では、立ち上げ時の売上は月100万円程度。商品開発と販売ページ更新を同じ担当者がやっていました。しかし2年で月2000万円まで成長すると、在庫が常に欠品、賞味期限切れの商品を販売してしまう、という事態に至りました。
その後、仕入れ・在庫管理部門を独立させ、マーケティング、運用、物流との情報共有を自動化することで、事態は改善されました。月次の販売ロスが30%削減され、顧客満足度も向上しました。
美容・印刷業の専門性を活かした部門分け
美容商社やカスタム印刷業のように、高い専門知識が求められる業種では、部門分けの方法が異なります。
単に「営業」「運用」「物流」と分けるのではなく、「提案営業(カスタマイズ対応)」「商品企画(ラインアップ管理)」「製造・納期管理」「カスタマーサクセス」という、受注から納品までの一連のプロセスを軸に部門を設計する必要があります。
BtoB美容商社の事例では、この体制変更により売上が1000%達成されました。各部門が顧客の個別ニーズを共有し、迅速に対応できる仕組みが構築されたためです。
BtoB商社の複雑なフローを支える連携モデル
BtoB取引では、発注から納品までのフロー自体が複雑です。商品仕様の確認、在庫確保、納期調整、請求・支払い条件の交渉など、複数部門の判断が連鎖します。
この場合、部門間連携を「自動化」から「判断プロセスの透明化」へ転換することが重要です。誰が何を判断し、次のアクションは何か、SlackやチャットツールでECサイトの運用フローを常時共有される仕組みが必須になります。
部門間連携を阻害する3つの失敗パターン

では、実際には何が起きるのか。失敗のパターンを見てみましょう。
情報共有の仕組みがないまま拡大する
部門を分けたが、情報共有の仕組みが整備されていない。マーケティング部門が顧客データを集めているが、運用チームには届かない。運用チームがカゴ落ち分析をしているが、マーケティングには報告されない。
結果、各部門は独立した判断をし、全体として矛盾した施策が実行されます。カートの離脱率が高いのに、別の部門は新規顧客の集客を強化しているといった、悪循環が起きます。
各部門の目標が相反している
営業チームはKPIとして「新規顧客数」を追う。運用チームは「カゴ落ち率の低減」を目標とする。マーケティングは「CPA(顧客獲得単価)の最小化」を追う。
これらの目標は、一見矛盾しません。でも、実行段階では衝突します。「新規顧客を増やすため、広告費を増やそう」という営業とマーケティングの判断と、「カゴ落ち対策に人員を配分するため、既存顧客の最適化に注力すべき」という運用チームの意見が対立するのです。
ECチームの役割分担と部門間の目標が統一されていないと、こうした対立は果てしなく続きます。
カゴ落ち対策が後手に回るケース
カゴ落ちは、ECサイトの売上損失の最大要因です。一般的にカゴ落ち率は60~80%に達します。つまり、カゴに入れたのに購入しなかったユーザーが、そのレベルの割合で存在しているということです。
なぜか。部門間で「カゴ落ちの原因は誰の責任か」が不明確だからです。サイト設計?商品情報?配送費用の表示?複数部門にまたがった原因を、一社完結で解決する仕組みがないのです。
部門間連携を実現するためのECサイト運用フロー設計
では、どうすれば組織体制を機能させ、部門間連携を実現できるか。
定期的な情報共有の仕組み
週次、月次で、全部門が参加する情報共有ミーティングを設定します。ただし、単に「報告会」ではいけません。
各部門が、自分たちの施策が他部門にどのような影響を与えているか、逆に他部門からはどのような制約や要望があるのか、を共有し、次のアクションを共同で決定する場でなければなりません。
たとえば、マーケティング部門から「新規顧客向けの広告を強化する」という報告があった場合、運用チームは「現在のカートシステムでは、新規ユーザー向けの決済最適化が不足している」という制約を提示し、そこから「では、まず既存カートのUX改善を優先し、その後に広告投下を拡大する」というアクション計画を立てるのです。
UX改善の優先順位を一元管理する
各部門から、「改善したい」という案は無数に出てきます。ページデザインの改善、商品説明の追加、決済方法の拡充、配送オプションの整理。これらを、誰がどのような基準で優先順位をつけるのか。
重要なのは、優先順位を「売上への直結度」で判断することです。カゴ落ち率の改善が最優先。次に、既存顧客のリピート率。その次に新規顧客の入口体験。このように、全部門が共通の優先軸を持つことで、施策がブレません。
カゴ落ち分析から全部門へのアクション指示
月次で、カゴ落ち分析を実施します。どのページで離脱が多いのか、どのユーザーセグメントが離脱しやすいのか、どのような理由で離脱しているのか。
その分析結果から、各部門へのアクション指示が生まれます。「商品ページの情報不足が原因なら、企画部門に追加撮影を依頼」「決済画面の入力項目が多いのが原因なら、運用チームがフロー最適化」「配送費用の表示タイミングが遅いのが原因なら、マーケティングが広告文で事前告知」。
このように、データに基づいた、部門横断的なアクションが取られるべきです。
ECサイト組織体制の最適化で売上を伸ばすために
ECサイトの組織体制を構築するとき、最も重要なのは、「制度設計」ではなく「心理設計」です。
つまり、すべての部門が、同じ顧客の不安を理解し、それを解消するために自分たちは何ができるか、という問い意識を持つことです。
顧客が購入を躊躇する背景には、写真と実物のギャップへの不安、配送の確実性への疑問、初期不良時の対応への心配があります。これらの不安を払拭するのが、企画部門の多角的な商品情報提供であり、マーケティング部門の事前情報提供であり、運用チームのスムーズな決済体験であり、物流部門の正確で速い配送です。
部門が分かれるほど、この一貫性を保つことは難しくなります。だからこそ、定期的な情報共有、優先順位の統一、データに基づいたアクション指示という、明確な仕組みが必要なのです。
我々が支援する企業の中には、こうした仕組みを整備することで、短期間で大きな成果を上げている事例が多くあります。ベビー服ブランドが月3000万円の売上を安定して生み出す体制、BtoB美容商社が売上1000%を達成した組織モデル、印刷会社ECが月100万円から月2000万円へと成長した運用フロー。これらは、すべて「組織の統一性」がベースとなっています。
さらに言えば、昨今のAI検索時代において、ECサイトの組織体制の最適化はさらに重要になります。AIが商品を推薦する際、推薦対象となるのは、「顧客の不安を完全に払拭した、信頼性の高いECサイト」です。これを実現するには、企画から運用、顧客対応まで、すべての部門が「顧客の不安解消」という共通目標で一体化していることが、必須条件となるのです。
月次売上が300万円を超えたら、兼任体制から専任化への移行を検討してください。月1000万円を超えたら、部門間連携の仕組みを最優先で構築してください。定期的な情報共有、優先順位の統一、カゴ落ち分析に基づくアクション指示、この3つが揃うことで、組織は初めて機能します。その結果、カゴ落ち率を10%改善するだけで、実質的な売上を50%以上向上させることも十分可能なのです。
お客様の声
印刷会社 EC事業責任者
自社ECの売上が伸び悩んでいた時期に、株式会社猫の手へ組織体制の見直しから相談しました。部門間の役割分担が曖昧だったことが根本的な課題だと気づかせてもらい、社内の動き方が大きく変わりました。結果として、EC売上が100万円から2,000万円規模にまで成長し、社内の意識も変わってきたと実感しています。体制を整えることがこれほど重要だとは、正直最初は半信半疑でしたが、今では組織づくりへの投資が最も効果的だったと確信しています。
BtoB美容商社 マーケティング部長
EC運営を内製化しようとしていたものの、どの部署が何を担うべきかが整理できておらず、施策がバラバラに動いている状態でした。株式会社猫の手にEC組織の構築支援をお願いしたことで、各部門の連携ルールが明確になり、施策の実行速度が上がりました。最終的には売上1,000%という数字にまで到達でき、チームとして達成感を共有できたことが何より大きかったです。単なる制作や納品で終わるのではなく、組織として動ける状態を一緒に作ってもらえたことが、今振り返っても最大の価値だったと思います。
ベビー服ブランド EC推進担当マネージャー
ブランドの世界観は持っていたものの、EC部門としての体制が整っておらず、担当者が属人的に動いている課題を抱えていました。株式会社猫の手との取り組みを通じて、商品企画・物流・カスタマー対応・デジタルマーケティングの連携フローを整理し、チームが同じ方向を向いて動けるようになりました。月間売上が3,000万円の水準に達したことは、組織として成果を出せるようになった証だと感じています。引き続き体制を磨いていく段階ですが、土台ができたことで議論の質が変わったと実感しています。
この記事を書いたのは・・・
猫の手 web部門
株式会社猫の手のweb製作部門です!のECサイトに関するおすすめ情報やWEB製作に関する情報を発信していきます。makeshopやカラーミー、shopifyやeccubeなどECサイトのサービス情報も発信していきます。

